僕らが生きてるその『MOMENT』

出来るだけ青臭く。
本多孝好MOMENT (集英社文庫)』読了。
春樹チルドレンを意識せずに青春小説を読みたいが、中々難しい。つい、比べてしまう。
病院で清掃夫アルバイトをしている大学4年生の「僕」が主人公。
病院には、「僕」がバイトをする前から、「死を間近に控えた患者の、どんな願い事でも叶えてくれる人が居る」という噂があり、その噂の必殺仕事人はいつしか「黒衣の男」から「清掃夫」に変わっていた。
という物語の、連作4編。
毎回、「僕」は1人の死を控えた患者の願いを聞き、それに応える。
その行動には理由があり、それは単純で、どうでも良い事なのだが、そこは若さ。時々強情、時々淡白。
患者の願いというのも、単純ではなく、捻くれていたり、どんでん返しのようなものがあったり。
青春小説といえば、誰かさんの影響か、人間関係が軽薄で、アッサリとして、出会いも別れも通過点に過ぎない、という様な雰囲気を存分に出すものが多いが、これはその雰囲気だけではなく、「僕」が自分から患者に関わろうとしているから、少し様子が違う。
単純に割り切れる事なんて無くて、勿論、生も死も割り切れるものじゃなくて、だからもしかしたら世界ってのは結構複雑なのかもしれない。だから、みんなズルくて、難しくて、悩んでいるんだろう。
自分の心だって他人の心だって全然分からなくて、例えば西尾維新サイコロジカル(下) 曳かれ者の小唄 (講談社ノベルス)』のいーちゃんの「分からねえよ」なんて、充分答えになりうる、もしかしたら、青春の答えなんじゃないかな、と思ったり思わなかったり。
因みに、読者募集の最後の願いは既に決定しており、書き下ろし小説は2006年4月20日に『青春と読書』(集英社読者情報誌)に掲載される。

MOMENT (集英社文庫)

MOMENT (集英社文庫)