逸般から一般へ

乙一失はれる物語 (角川文庫)』読了。
過去に角川スニーカー文庫で出版された本に収録された小説の内、代表作を選んで収録したもの。従って、角川スニーカー文庫版の方を読んでいれば、前半は再読になる。
『Calling You』『失はれる物語』『傷』『手を握る泥棒の物語』『しあわせは子猫のかたち』が角川スニーカー文庫で出版されたもの。どれも白かな。漫画化されたもの、映画化されたもの、ラジオドラマ化したもの、というわけだ。
改めて読んでも、ライトノベルっぽさを感じさせない、非常に綺麗で切ない話で、成る程、レーベルでフィルタが掛けられて、こんな良い物語が読まれないまま沈むよりは、こうやってイラスト表紙でない一般小説として出した方が、多くの人に読んでもらえて良いのかも知れない。ファンとしては、どちらでも関係無いのだけれど。
『ボクの賢いパンツくん』はネガティブキャンペーン3の賞品トランクスに印刷された短編小説。白。ブリーフからトランクスへ。さよなら、パンツくん。
『マリアの指』は単行本書き下ろしの中編。ミステリィ。白くは無いけど黒でも無い。誰もが比較的幸せになっている様な気がするが、それでも悲しい事件は消えない。
『ウソカノ』は「あとがきにかえて」とある。短編小説。白。僕と脳内彼女と友人と友人の脳内彼女。設定は『Calling You』に近いものがある。何故「あとがきにかえて」なのだろう。これが近況なのか。あとがきという文章が書けなかったのか。映画の話が出てくるなら、近況だろうと思うが、音楽だしな。
ライトノベルが逸般だなんて、思ってない。

失はれる物語 (角川文庫)

失はれる物語 (角川文庫)