仮想下層

中国に行って、中国は適当な国だと感じた。いち旅行者が上っ面を見てそれなのだから、中国をよく知る者ならさらにそう思うだろうし、思い過ぎるとそれがスタンダード(基準)なビューポイント(視点)になって新しい視野を得るのだろう。兎にも角にも、中国は適当だった。
成都文殊院に行ったとき、近くに土産物街の様な場所があり、歩いていると、『Fate/hollow ataraxia』のセイバーと凛を見た。あの、移動選択マップに表示されるデフォルメキャラのキーホルダーを見た。手作りらしいというか、割と作りが雑なプラスチック製だった。『Fate』の中文版が違法アプリ流通サイトにあるのは知っていたが、まさか土産物屋でお目に掛かるとは思わなかった。
オリンピック開催前、中であれやこれや、中国を貶す文を目にしたが、僕は中国を擁護する気は無いし、日本を心から愛しているわけではないので、それに関して意見は無いが、少なくとも、日本から得られる情報だけで、日本語で書かれたマスコミの情報だけで、あれやこれや決められる、あるいは他人の意見を見て容易に自分の意見を変えて元からそうであったかの様に大声で叫ぶ者よりは、日本の事も中国の事も知っているという自信がある。
中国と言うのは、その適当さ故に、どうも対外的に敵になりやすい。ある意味、中二病の様な国だ。適当故にそれをあまり気にしていない。叱られて仕方なくハイハイと御座成りな返事をして対処をする、という様な思春期にありがちの、ユーウツでカッタルイが恰好良いと思っているんじゃないかと思える程だ。だから、中二に対して、外側の大人が見ると、それは怠慢の態度であったり、要するに不良に見えるのだけれど、実は内側で色々考えていたりする。そういう国が、内側から見た中国だ。だから、これから中学生の中国は高校生になって、大学生になる。そして、大人になる。
ファウスト』vol.7でも語られていたことだけれど、中国は成熟のプロセスを現在進行形で辿っている。内側の論理が整然としていて、人の力が他に無いほどに強い。これは、成熟した中国が脅威に、良い表現を使えば、唯一無二の最先端に立てる可能性を秘めている。
学部の時、中国語を第2外国語として選んだのは、そういう予感の端を、今ほどで強くなかったが、『B-GEEKS』や『ハッカージャパン』を片手にインターネットの海を巡っていて、感じたからだった。今にして思えば、当たったな、と少し嬉しく思っている。語学を学ぶことによって、多くの文化に触れるための準備をすることは、インプットの環境を充実させるためには必要なことだ。中国に触れることで、少々閉じては居るが、得られるものは大きい。
足元が膨らんで膨らんで膨らんで、平地が丘になり山になったとき、上から転がり落ちない様に気を付けよう。常に上から見下ろす強さと、勇気と、傲慢さと、余裕を。
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with ペンギン将 in 成都 posted by (C)Yoshiyasu