馬と美と
舞城王太郎『山ん中の獅見朋成雄 (講談社ノベルス)』読了。
太田編集長が『ファウスト』vol.6はベストアルバムだ、と言っていたが、この小説は正に舞城王太郎のソロシングル。
ここまで見事に擬態語・擬音語を並べた文章は珍しい。
水のこぼれる様子を「もろりと」と表現し、「しぞりりりりんに」「へしおうすうういし」「さるし えいしゅはん と しいい」と、文章と共に読まなければ何の音を表しているのか分からない語が続く。声に出して読んでみると、成る程、"しっくり"くる。
主人公の獅見朋成雄は、家に代々伝わる"鬣"が背中に生え、足が早く、耳が良い。そして、ある日、山で"馬"を見つけ、それまでの生活ががらりと変わることになる。
美を求める大人と、自己を失い生まれ変わる少年。何とも青春的。
終わり方は何とも普通の青春小説的な終わり方に見えるが、同時にミステリィ要素もしっかり入っていて非常に面白かった。
死を非常にあっさりと書くのが、新本格以降の特徴(だったかな)だが、こちらの方がリアリティは高いといつも思う。
- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (53件) を見る