やられた、何なんだこれは(帯より)

乙一ZOO 2 (集英社文庫)』読了。第1巻はこっち
『血液を探せ!』。白だと思うがわずかに黒が混じっている。痛みを感じなくなった老人。家族+主治医で別荘に旅行に来たが、朝起きたら何者かに包丁で刺されて瀕死に。輸血用血液がどこかに消えた!乙一作品に結構頻繁に出てくる、痛みを感じない人間。お陰で明るい雰囲気で物語が進む。登場人物の名前も素的(素敵ではない)。「ワシの血液がぁ〜……」
『冷たい森の白い家』。黒。伯母に引き取られ馬小屋で暮らす主人公。顔を潰され、馬小屋を追い出され、森に逃げた。グロいが、静かな雰囲気が気持ち悪さより寂しさを駆り立てる。「馬小屋の壁は石で出来ていた。」
『Closet』。黒。主人公の夫の実家で、夫の弟が死んだ。夫の妹と2人で犯人を探すが……。ちょっとどんでん返しありの一番ミステリィっぽい作品。「……その通りね」
『神の言葉』。黒。口にした言葉で生物を操れる主人公。但し、一度口にした言葉でつくり出した法則は二度と戻せない。これは怖い。追い詰められていく様子や、オチも怖い。救いがないと言うか、想定の範囲内の一番嫌な所にオチたと言うか。「枯れろオオ……、腐ってしまえエエ……」
『落ちる飛行機の中で』。多分白。T大に5回落ちた少年(拳銃所持)に乗っ取られた飛行機。1時間半後にT大校舎に落ちるらしい。主人公は、奇妙なセールスマンから安楽死の薬を買うか、ハイジャックが失敗に終わる方に賭けるか、決めなければならない。明る過ぎて笑ってしまう。単行本の書き下ろしとして書いた事を意識した文もある。極限状態のハイテンションとでは無く、極限状態なのに普通の会話をしている登場人物達が面白い。オチも綺麗。「ふん、まあね。私はT大卒業だよきみ。T大というのはつまり東京大学のことなんだがね」(直後に少年に撃たれて死亡)
『むかし夕日の公園で』。黒。たった4ページのショートショート。それでも乙一ワールド全開の怪しさと静かさ。「ここからだして」
解説⁄島本理生西尾維新佐藤友哉他、つまりファウストメンバで合コンをした際の女性メンバの1人、島本理生さんが乙一と割と仲の良い雰囲気と、乙一作品の幅の広さについて語っている。
さて、乙一ワールドは現在、舞台や漫画原作や映画など、多方面で展開している。小説にとどまらず、メディアをどんどん制服していると言っても過言ではないだろう。所謂今で言うファウスト系の、若い作家の小説を読んだのは、乙一作品が最初だった。小説を読んで、同じ年代に生まれ、こんな物語が読めるなんて何てラッキィなんだ、と思った。今でも変わらない。いつまでも、彼等天才を追いかけていきたい。

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)