「愚か者には見えない」とか言わない

「見えない」という状態には幾つか種類がある。物に隠れて見えない、小さ過ぎて見えない、周りのものと同化して見えない、対象に注意がいかずに見えない、などなど。
透明マント、というより光学迷彩の方が馴染みがあるのでこちらを使うが、光学迷彩の場合は、光の進む挙動を自然とは異なる状態にして、反射した光が目に戻って来ない様にする。従って、光のみに頼っている視覚では感知出来なくなる。勿論触覚ならば感知出来る。
店の中で使われて、窃盗が起こると困るから、店内のライトは特殊な光で光学迷彩を無効にするか、ぼんやりでも人を視覚で検知できるような光にしておくべきだろう。
開発されても、暫くは値段が高いだろうから軍事とか学術の分野のみで使われるのだろうが、いつか未来デパートの様な場所に並ぶ日が来るのだろうか。何をしよう。

健康診断

午前中は健康診断に行ってきた。
レントゲン、尿検査、身長&体重(体脂肪)、血圧、血液検査、心電図、問診、アンケート。
尿検査は前日までに聞いていなかったので、出るか心配だったが出た。血圧は1回目が高いと出て、再検査の後正常値。緊張でしょう、と言われた。血液検査は、勿論注射。血液検査で気持ち悪くなった事はありませんか、と聞かれたが、大丈夫と答えてしまった。ブスーッと注射を刺されて、チューッと血を抜かれた。真横より少し後ろを向く様な姿勢で、徹底的に目を逸した。全く、原始的な手段だなあ。前日夜も数時間前もコーヒーを飲んでいるのだが、大丈夫だろうか。心電図は正常とは言えないけど許容範囲、と言われた。何がだ。問診は異常無しと伝えて終わり。
身長:174.4cm、体重:58.4kg、体脂肪率:15.3%、だそうだ。太ってる。日頃の食生活が良過ぎるのか。少し考え直そうか。
血を抜かれたせいか、さっきから頭の回転が悪い様な。

やられた、何なんだこれは(帯より)

乙一ZOO 2 (集英社文庫)』読了。第1巻はこっち
『血液を探せ!』。白だと思うがわずかに黒が混じっている。痛みを感じなくなった老人。家族+主治医で別荘に旅行に来たが、朝起きたら何者かに包丁で刺されて瀕死に。輸血用血液がどこかに消えた!乙一作品に結構頻繁に出てくる、痛みを感じない人間。お陰で明るい雰囲気で物語が進む。登場人物の名前も素的(素敵ではない)。「ワシの血液がぁ〜……」
『冷たい森の白い家』。黒。伯母に引き取られ馬小屋で暮らす主人公。顔を潰され、馬小屋を追い出され、森に逃げた。グロいが、静かな雰囲気が気持ち悪さより寂しさを駆り立てる。「馬小屋の壁は石で出来ていた。」
『Closet』。黒。主人公の夫の実家で、夫の弟が死んだ。夫の妹と2人で犯人を探すが……。ちょっとどんでん返しありの一番ミステリィっぽい作品。「……その通りね」
『神の言葉』。黒。口にした言葉で生物を操れる主人公。但し、一度口にした言葉でつくり出した法則は二度と戻せない。これは怖い。追い詰められていく様子や、オチも怖い。救いがないと言うか、想定の範囲内の一番嫌な所にオチたと言うか。「枯れろオオ……、腐ってしまえエエ……」
『落ちる飛行機の中で』。多分白。T大に5回落ちた少年(拳銃所持)に乗っ取られた飛行機。1時間半後にT大校舎に落ちるらしい。主人公は、奇妙なセールスマンから安楽死の薬を買うか、ハイジャックが失敗に終わる方に賭けるか、決めなければならない。明る過ぎて笑ってしまう。単行本の書き下ろしとして書いた事を意識した文もある。極限状態のハイテンションとでは無く、極限状態なのに普通の会話をしている登場人物達が面白い。オチも綺麗。「ふん、まあね。私はT大卒業だよきみ。T大というのはつまり東京大学のことなんだがね」(直後に少年に撃たれて死亡)
『むかし夕日の公園で』。黒。たった4ページのショートショート。それでも乙一ワールド全開の怪しさと静かさ。「ここからだして」
解説⁄島本理生西尾維新佐藤友哉他、つまりファウストメンバで合コンをした際の女性メンバの1人、島本理生さんが乙一と割と仲の良い雰囲気と、乙一作品の幅の広さについて語っている。
さて、乙一ワールドは現在、舞台や漫画原作や映画など、多方面で展開している。小説にとどまらず、メディアをどんどん制服していると言っても過言ではないだろう。所謂今で言うファウスト系の、若い作家の小説を読んだのは、乙一作品が最初だった。小説を読んで、同じ年代に生まれ、こんな物語が読めるなんて何てラッキィなんだ、と思った。今でも変わらない。いつまでも、彼等天才を追いかけていきたい。

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)